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江戸~明治時代の教科書

電子展示:寺子屋の学習と往来物

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5. その他の往来物

寺子屋では、語彙を増やし、字を上手にすることばかりでなく、身に着けなければならないさまざまな教訓も授けられた。中でも

実語教・童子教』 (図1) 1690(元禄3)年刊・大本 [本文画像を見る]

は『庭訓往来』同様、江戸時代においては最もポピュラーだったもので、

実語教具注抄』 (図2) 刊年未詳・大本 [本文画像を見る]

のような注釈書や、

実語教童子教絵抄』 (図3) 1861-64(文久年間)年刊・大本
[本文画像を見る]

のような絵抄が数多く出た。『実語教』は平安時代末期、貴族の手によるもの、『童子教』は鎌倉時代の僧侶の作と考えられている。江戸時代にはこの二者は一緒にして編集されるのが一般であった。


さて、都市とその近郊では商業活動を行う上で必須であった算術を教えることもあった。算術としては、吉田光由著の『塵劫記』(1627(寛永4)年初版)が最も流布した。

万宝塵劫記』 (図4) 1694(元禄7)年刊・半紙本 [本文画像を見る]

新編塵劫記』 刊年未詳・大本 [本文画像を見る]

寛永年間から明治中期に至るまで版を重ねて様々な体裁のものが出された。

早学算切記』 1868(明治初年)頃刊か・中本 [本文画像を見る]

は、柱刻を「稚ぢんかう記」とする如く『塵劫記』の影響下に成ったものだが、表紙は当時の合巻(幼童向けの絵が主体の本、草双紙)さながらである。子どもの心をなんとか算術に引きつけようとする工夫の一つであろう。


(解説 : 丹 和浩【たん かずひろ】 | 故人・本学附属高等学校大泉校舎教諭)

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※本稿は『特別展近世庶民教育資料「教育双六と教科書」目録:東京学芸大学創基120周年記念』(会期・会場:平成5年12月6日-10日 東京学芸大学芸術館展示場)掲載の解説「Ⅱ往来物」を再編集したものです。